おさかな座賀紀行


マトウトラギス

連日,うだるような暑さが続いていますが,海の中では夏の風物詩,死滅回遊魚の姿が増えてきました.実験所の前でもトゲチョウ,アケボノチョウ,ヒレナガハギ,テリエビス,サザナミフグなどが確認でき,賑わいを見せています.

さて今日の魚はマトウトラギス Parapercis ommatura Jordan and Snyder, 1902です.

英虞湾では本種とトラギス,コウライトラギス,クラカケトラギスの4種のトラギス属魚類が見られます.その中で本種は一番の小型種で全長10cm前後までにしかなりません.トラギス属魚類には熱帯性の種が多いですが,本種は温帯種でサンゴ礁域には分布せず浅海域の砂泥底を好みます.この標本の個体も座賀島沖の水深15mの泥底のような場所で採集されました.一見すると地味に見えてしまう本種ですが背鰭の縁の鮮やか朱色や腹部の紫色の輝き,名前の由来となった尾鰭の眼状斑などでなかなか魅力的な魚に見えてきませんか?

 

Parapercis ommatura

ミナミハタタテダイ

今日の魚はミナミハタタテダイHeniochus chrysostomus Cuvier, 1831です.

本邦にハタタテダイ属魚類は本種を含め6種が分布していますが,本種は眼を通る黒色縦帯が腹鰭まで達することから日本産他種と容易に区別することができます.幼魚のころには写真のように臀鰭によく目立つ眼状斑があるのですが,成長に伴いこれは消失します.その名のとおり本種は同属のハタタテダイやムレハタタテダイと比較してより南の暖海域に分布するようです.

この標本の個体は座賀島にて手網で採集されたもので,座賀島における本種の初記録となりました.

 

Heniochus chrysostomus

オキヒイラギ

約3年半ぶりの更新です。

今日の魚はオキヒイラギEquulites rivulatus (Temminck and Schlegel, 1845)です。

本種はヒイラギ科イトヒキヒイラギ属に属する魚類で、体高が高く、頭長が体高よりも著しく短いこと、背鰭第2棘が伸長しないこと、胸部が腹側まで被鱗することにより日本産の同属他種と区別できます。三重県志摩地方では「きら」と呼ばれ、定置網で混獲されます。本種は定置網で同様に捕獲されるヒイラギNuchequula nuchalis (Temminck and Schlegel, 1845)よりもやや深場に生息しています。写真の標本は座賀島で釣りにより採集された個体です。

 

311. Equulites rivulatus 53188

ロクセンスズメダイ

今日の魚はロクセンスズメダイAbudefduf sexfasciatus (Lacepède,1801 )です.

この個体は座賀島で採集されたものです.例年は本種の属するオヤビッチャ属の中で見られる種はほとんどオヤビッチャのみですが,今年は本種やテンジクスズメダイも多くみられ,特にロクセンスズメダイの個体数はオヤビッチャより多いくらいでした.本種は尾鰭の上葉と下葉に黒線が見られることから同属他種から容易に区別することができます.

ナンヨウツバメウオ

今日の魚はナンヨウツバメウオPlatax orbicularis (Forsskål,1775 )です.

この標本は熊野灘に面した片田漁港の近くにてタモ網で採集されたものです.本種の幼魚は夏から晩秋にかけて漁港内などで見ることができます.枯れ葉に擬態していることで有名です.個人的には2匹から3匹程度の小さな群れで泳いでいることが多いように感じています.

ハナビヌメリ

今日の魚はハナビヌメリParadiplogrammus enneactis (Bleeker, 1879)です.

この標本は座賀島にてタモ網で捕獲しました.本種の属しているネズッポ科のうち座賀島周辺の投げ釣り等で釣れるトビヌメリ,ネズミゴチ,ハタタテヌメリはいずれもネズッポ属ですが本種はハナビヌメリ属に属しています.本種は熱帯域まで広く分布しており藻場に多く生息しているようですが,この個体は転石の多い石灰藻類の上で発見しました.

タケノコメバル

今日の魚はタケノコメバルSebastes oblongus Günther,1877です.

本種はメバル科メバル属の魚類です.メバル属は近年まではフサカサゴ科に含まれていましたが最近では別の科として扱われるようになりました.三重県において本種は伊勢湾ではよく見られますが外洋向きではあまり見られません.この個体は実験所の前で釣れたものです.英虞湾でもあまり見る機会はなく貴重な標本となりました.

ヒメクサアジ

今日の魚はヒメクサアジMetavelifer multiradiatus (Regan,1907)です.

本種はアカマンボウ目,クサアジ科,ヒメクサアジ属の魚類で,近縁種にはクサアジがいます.クサアジとは,背鰭の棘状が多いこと,背鰭軟状下に,黒斑があることなどにより見分けることができます.この標本は,行き付けの鮮魚店で譲って頂きました.

キンチャクダイ

今日の魚はキンチャクダイChaetodontoplus septentrionalis ( Temminck and Schlegel,1844 )です.

本種はこの地方ではイセエビの刺し網で混獲されます.この標本は和具でかかったものを分けていただいた物です.本種以外のキンチャクダイ科魚類をこの志摩地方では見たことがありません.

リュウキュウヨロイアジ

今日の魚はリュウキュウヨロイアジCarangoides hedlandensis (Whitley, 1934)です.

本種は夏から初冬にかけて定置網で若魚が漁獲されます.今年は昨年より多く漁獲されています.和名にリュウキュウと入りますがヨロイアジ属の中では一番目にする機会が多いです.額が張り出し,その下部が明瞭に凹むことで同属多種と区別することができます.


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